2011年10月23日(日)

ほらくらべ

むが〜し、むがし津軽の木造(きづくり)に、たいしたほら吹きがいだんだど。
「津軽のほら吹きはたいしたもんだ」という噂が秋田にまで聞こえていったど。

そしたら秋田のほら吹き名人が「なに、津軽にもほら吹きがいるって、よおし、ひとつ試合ば申し込んで、こてんこてんにやっつけでやるが」
って、津軽さやって来たど。
「ごめんください、津軽のほら吹き様いましたが」って声をかけたら、十二才くらいの男の子が出て来て、「どちら様ですべ」って聞いだど。

「おらは秋田のほら吹きだども、津軽のほら吹き様ど試合ばしてど思って来ました」って言ったら、男の子が「オドは今留守でせえ」って言ったど。
「どぢらさ行ぎましたべ」って秋田のほら吹きが何気なぐ聞いだら「オドは、昨日の台風で岩木山が転びそうになったがら、割り箸三本持って突っ張りしに行ぎました」って、けろっとして答えたど。
これには秋田のほら吹きもびっくりして「へば、オガ様はどぢらへ行ぎました」
って聞いだら、「オガは、昨日の大雨で十和田湖の水があふれで洪水になりそうだからって、手桶と柄杓ば持って水を汲み出しに行ぎました」って答えだど。

ますます驚いた秋田のほら吹きが、「へば、姉様はどちらへ行ぎました」って聞いだら、「おらの姉は、昨日の雷で天が二つに裂げだもんだがら、針と縫い糸ば持って天ば縫い合わせに行ぎました」って、またまた平気な顔で答えたど。

「こりゃ子供だど思って油断はでぎねえしかし、こごらでいっちょう秋田のほら吹き様の腕ばみせでやるべ」と思って、「実はゆうべの大風で、秋田のお寺の釣鐘が吹き飛ばされでこっちの方に飛んで来たので探しにきましたが、わがりませんが」って聞いだど。

そしたら男の子が「そう言えば、おら家の便所の軒の蜘蛛の巣になんが引っ掛がって、ゆうべから
がらんごろんがらんごろんって鳴って、うるさくて今朝まで寝られながったけども、そせば蜘蛛の巣に引っ掛がっているのは秋田の釣鐘でねべが」って答えたもんで、さすがの秋田のほら吹きも「子供でもこったらに大きなほら吹ぐなら、親のほら吹きはどったらだほら吹きが分がらねえ」って、試合もしねえで秋田さ逃げで行ったど。

とっちばれこ
(おしまい)






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